ピアノのレッスン
ヲヂサン、どうした?今日はいつになく熱心に練習しているな。
はい。レッスンが明日だというのに、課題曲が仕上がりません。
なんだ、今まで課題曲が仕上がったことがあったのか。
いえ、勿論毎回仕上がりには程遠いのですが、今回はいつもの半分も練習していませんので。
練習して上達するのは40歳代までで、50歳を過ぎたヲヂサンでは練習するだけ無駄ちゃう?
お!関西の出身ですか?奇遇ですね~。日本も狭いですね。オイラは東京です。
しかし考えてみたらピアノ教師とはつくづく偉いものだなと思います。20歳以上も年の離れたしょぼくれヲヂサンを嫌な顔ひとつせずに叱咤激励鼓舞指導するのですから。そしてそんなオイラも先生をピアノ道の先達として敬い、おっしゃることには素直に謙虚に従い、全身全霊を傾けてその指導を受け入れているのです。
やはり実力がものをいう世界。皺の数や額の広さ、そして腹回りだけではどぎゃんもならんとですたい。
ピアノ教師とは、こんな薄汚いオイラをミューズの神々が微笑む楽園へと誘(いざな)う、美しい道先案内人だがやー。
ミューズの住まう楽園にいきなり貧乏神が現れたようなものか。
多分独学でピアノを練習していたら、ここまで熱心にはならなかったと思います。「明日はレッスンだ!」と思うと、さあ~それがもうプレッシャーで、いてもたってもいられない。オイラが練習して行かなかったら、あの先生は悲しむだろうな。きっとあの美しい顔を歪めて「あら、今日は練習してこなかっちゃったのね? もう~、いけないヲヂサンね。おしおきよ
」と言ってオイラの脇腹に激しく蹴りを入れてくるに違いありません。
あのスルドい蹴りを恐れて、叶わぬまでも明日に備えて課題曲を必死にさらうオイラなのです。
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